溶着とは
熱可塑性のフィルム、シートなどを熱によって溶かし、加圧と冷却することで接着させることを溶着と呼んでいます。「融着」や「ヒートシール」、「熱接着」と呼ばれることもあります。
溶着は大きく分けて高周波溶着、熱溶着、超音波溶着があります。
溶着方法の選定は、被加熱物の種類と形状(厚さ、大きさ)、溶着形状などにより行います。
溶着は、
■ 加熱能力および時間
■ 冷却能力および時間
■ 加圧力
により、溶着強度や風合いなどが大きくかわります。
高周波溶着
用途 | テントシート、自動車内装、農業用フィルム、手帳 等 |
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高周波誘電加熱法を用いた溶着方法です。
高周波誘電加熱法とは、数10MHzの高周波(電磁波)エネルギーの電界作用によって、原子や分子レベルの電位的な運動により被加熱物自身(誘電体)を発熱させる方法です。
ヒーターなどを使用した加熱方法は、被加熱物の外部にある熱源から、熱伝導(熱の移動)によって加熱する方法(外部加熱)です。それに対して高周波誘電加熱は、被加熱物自身を発熱させるため「内部加熱」と呼ばれています。
他の外部加熱方式では、被加熱物の熱伝導に依存するため、内部まで加熱させる場合は長時間を要するために、溶着しない箇所にまで熱の影響が及ぶ場合があります。しかし、高周波溶着では、被加熱物の溶着する箇所のみを内部加熱させるため、短時間でかつ溶着しない箇所に熱の影響を与えません。そのため、美しい風合いで仕上がります。
高周波は電波の応用であるため、関連法規や周辺設備への電磁妨害(EMI)に配慮する必要があります。
高周波溶着を行う機械を総称して「ウェルダー」と呼びます。
熱溶着
被加熱物の外部にある熱源から、熱伝導(熱の移動)によって加熱する方法です。
熱溶着には、熱風式、熱板式、インパルス式、コテ式などがあり、それぞれに特長があります。
熱風式溶着
用途 | フレキシブルコンテナバッグ、テントシート、風管、養生シート、フィルター、目止め(シーリング加工)、防護服 等 |
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2枚のシートの間に熱風(Max.700℃)を吹きつけ加熱し、ローラーの加圧によって溶着する方法です。
溶着面に直接熱風を吹きつけるため対象物の厚さに影響を受けません。
熱風温度、風量、ローラー加圧力、吹出しノズルの位置調整などにより、溶着条件を決定します。溶着幅は10~45mmです。
高周波溶着で加工しにくいオレフィン素材の加工に用います。また、他の溶着方法では困難な曲線加工を行うことができます。
熱風式溶着を行う機械を「ホットエアー」と呼ぶことがあります。
熱板式溶着
用途 | 間欠式-トップシール、文具ケース 等 連続式-フッ素フィルム、農業用ハウスシート、テントシート、防炎シート 等 |
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被加熱物の上下に設置した加熱板ではさみこみ、被加熱物を加熱させることで溶着する方法です。
文具ケースなどの加工に使用する間欠送り式と長尺シートなどの加工に使用する連続送り式があります。連続送り式の溶着幅は10~40mmです。
高周波溶着と違い、対象素材を選びません。
(塩ビフィルム、オレフィンフィルム、フッ素フィルム 等)
インパルス式溶着
用途 | 反継加工、エコバッグ 等 |
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被加熱物にヒーター線を加圧し、瞬間的に大電流を流して発熱させ、被加熱物を加熱させることで溶着する方法です。
通電完了後も加圧状態のまま冷却させる必要があります。溶着以外に溶断に使用することもあります。
他の熱溶着方式と異なり、溶着工程時にのみ通電するため、待機時の消費電力がほとんどありません。
また、機構や制御が簡単なため他の溶着機に比べローコストです。
この溶着は瞬間的に加熱するため「瞬間的=インパルス(IMPULSE)」と呼ばれるようになりました。
コテ式溶着
2枚のシートの間にコテと呼ばれる加熱板(Max.400℃)を挿入し、ローラーの加圧によって溶着する方法です。
溶着面に直接加熱板を当てるため対象物の厚さに影響を受けません。溶着幅はMax.40mmです。
他の熱溶着方式に比べ、溶着風合いが美しく、ほとんどのフィルム・シートに適します。
超音波溶着
用途 | 無縫製医療、防護服(不織布)、プレス溶着加工 等 |
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ホーンと呼ばれる共鳴体から周波数20kHz以上の超音波振動を被加熱物に伝え、強力な摩擦熱を発生させ溶着する方法です。
超音波発振時に、独特な高周波音が発生します。